2025年07月18日
【不適切な学童クラブへの補助金停止、市の「本気度」は?】(2025年6月定例議会 民生常任委員会)
ごく一部、不適切な学童クラブが存在することで、横須賀市内のお子さんらが非常に危険な状況に置かれていることは、5月に記したブログで述べた通りです。
参考【ごく一部の不適切な運営者のせいで、横須賀市の学童保育全体のイメージが低下するのは残念である】(2025年5月21日)
https://www.katoyusuke.net/blog/2025052101
6月定例議会中、このことについて、民生常任委員会で質しました。
(市長選挙を挟んでの報告で申し訳ありません)
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■ 不適切クラブへの補助金停止、市の「本気度」は?
今年3月定例議会にて、上地市長は「継続的に不適切な事案が発生するクラブ」には補助金の取り消しや不交付も検討するとの方針を表明していました。
そこで今回私は、3か月経った今の具体的な進展を質問。これに対し市担当課長は「不交付の基準づくりを具体的に進めている」と答弁し、問題の学童クラブに対してはヒアリングと改善指導を行っているとしました。
■ 新聞報道で明るみに出た「不適切な対応」
5月の新聞報道では、問題の学童クラブにおいて、
- 子ども同士のトラブルについて本人にも保護者にも聞き取りせず一方的に「相手の保護者にクレーム報告した」と通告
- 保護者の目の前で大声で子どもを怒鳴る
- 複数児童が同時に退所を余儀なくされる
などの深刻な状況が指摘されていました。
市側もこれを「不適切な事案」と認め、改善指導の対象としていると答弁しましたが、「次やったら補助金停止」といった明確な対応までは至っていません。
■ 保護者に他の選択肢はあるのか?
私はさらに、「不適切なクラブに通わせざるを得ない地域では、他に選択肢がない」と問題提起しました。
保護者が退所後に在宅勤務を余儀なくされる実例を記事を引用して取り上げ、本当に支援すべきは子どもとその家庭である点を指摘しました。
市側は、今後可能であれば翌年度以降に不交付とするような対応の検討と、それに伴った新たなクラブ整備を検討していきたい旨を述べました。
■ 「証拠の積み上げ」と「過去の検証」も必要
さらに私は、3月議会での民生局長答弁「証拠を積み上げていく必要がある」に言及し、未来だけでなく、過去の相談・改善指導も含めて調査・記録すべきであることを強調しました。
市もこれに応じ、「過去にすでに市に相談が寄せられていて、その事案に対してクラブに対して改善指導を行っているものについても、合わせて積み上げていきたいという風に思っています」と答えました。
ーーー答弁書き起こしーーーー
【書き起こし】2025年6月定例議会 民生常任委員会 6月3日 その他所管事項に関する質疑
■1 不適切な事案が発生する放課後児童クラブへの対応について(福祉こども部)
(1) 補助金の決定取り消しや不交付も視野に入れるとした上地市長の決意のその後について
▽3月定例議会 よこすか未来会議 竹岡力議員の代表質問において、不適切な事案が発生する放課後児童クラブへの対応について質問があり、上地市長からの答弁として、「継続的に不適切な事案が発生するようなクラブについては、今後、補助金の決定取消しや不交付も視野に入れて対応を検討していく」とありました。これまでに見られなかった踏み込んだ答弁でした。
ごく一部の不適切な放課後児童クラブの存在によって市全体の放課後児童健全育成事業自体に疑義が呈されてしまう事態にならないようにしたいとの決意が見えたように感じられましたが、まずは、3か月が経過した現時点において、担当課として、具体的に何かなさったことがあれば、お聞かせください。
●担当課長
3月議会で市長から補助金の取り消しや不交付を検討する方針が示されましたので、いま福祉こども部では決定取り消しとか不交付にするための基準の策定を具体に検討をすすめているところです。また、不適切な事案のクラブに対してはですね、訪問してヒアリング、それから改善指導などをこの間行ってまいりました。
▽加藤ゆうすけ
5月21日に、新聞記事にて、放課後児童クラブ側の不適切な対応により、複数の児童がクラブ退所を余儀なくされた横須賀市の事例が紹介されていました[1]。課長のコメントも掲載されていましたので、ご承知のことと思います。
記事の中で紹介されていた事例で言えば、子ども同士のトラブルがあった際、子ども本人に聞き取りをせず、保護者の意向も確認をしないで、「先ほど、相手の保護者様にクレームをご報告致しました」と極めて雑な対応をしていたり、放課後児童クラブの代表者が大声で子どもを怒鳴っているところに保護者がお迎えに登場して「何事か」となっていたりと、複数の事例が重なっていました。そして、複数の児童が同じタイミングで退所を余儀なくされていることがわかります。
ここで伺いたいのですが、上地市長のおっしゃっていた「継続的に不適切な事案が発生するクラブ」という中での、「継続的に」の基準は、何ですか?
●放課後児童対策担当課長
まず不適切な事案が発生した場合、当然ですがクラブに適切な対応ができるように市のほうで改善指導をしてまいります。継続的に という部分になりますと、改善指導をしたにもかかわらず改善が見られない、あるいは、いったん改善されたけれど一定期間内に再度不適切な事案が発生してしまう、こういったところを想定していますが、ではその期間であったり、どういう部分を見込む・見込まないについては、もう少し詳細な検討が必要だと思っておりますので、検討を進めてまいります。
▽加藤ゆうすけ
どのような期間内に、という部分も今後議論されると思うのですが、「不適切な事案」と市側が捉える基準はどのようなもので、それに照らした際に、今回の新聞記事で紹介されていた事案は「不適切な事案」にあたりますか?
●放課後児童対策担当課長
不適切な事案といったときには実際にはかなりいろいろな種類の事案が存在すると思いますが、基本的には法令、条例、それから補助金をだしているので交付要綱等に照らして適切な対応がとられていなければ不適切、そういったところが判断基準になります。
今回の事案については、一連のクラブの対応の中に不適切な点がありましたので、改善指導の対象とはなっています。
▽加藤ゆうすけ
今回の対応は不適切な点があったよということで。
こちらは、改善指導に行かれた際に、平たく言って、次やったらアウトですよ、といったコミュニケーションはとっていらっしゃるのでしょうか?
●放課後児童対策担当課長
そうですね、今の時点では、不交付とか決定取り消しの基準が明確ではない状態なので、今の時点では次やったらアウトというような明確な指導、あの、当然ですけども、こういうのが続ようだと、という注意喚起はしていますけれど、基準に基づいた対応という形ではしてないのかなと認識しています。
▽加藤ゆうすけ
法令に則って明確にというところは大事だと思いますので、その対応は大事かなとは思っています。
(2) 不適切な事案が発生する放課後児童クラブに仕方なく通わせざるを得ない地域におけるその他の選択肢の用意について
▽加藤ゆうすけ
っして、市内の放課後児童クラブをめぐっては、2017年、補助金不正受給が発生し、クラブに対して700万円超全額返還を求める事態が発生しました。2018年には、別のクラブで「二度と学童に来るな」と事業主が暴言を吐いて、こどもの預かりを拒否する前代未聞の事件も発生しました。それらを受けて、市側としてもとても頑張ってくださってきているとは感じています。横須賀市学童保育連絡協議会のかたも、「監査を厳しくし、会計や保育の状況についてのヒアリングを進めるなど、市も努力している」と記事の中でも評価されていました。
ただ、現実に、不適切な事案は、先ほど課長にお答えいただいた通り起きていて、それを受けて退所を余儀なくされる児童がでています。記事の中でも、「2月に退所し、仕事のピークに重なったが職場に無理を言ってテレワークで対応した」「『娘も私が仕事に行けないことを申し訳ないと思っている様子だった』と振り返る」と記事で紹介されており、深刻な状況ですよね。
こちら、まさに記事中に課長のお言葉であったのが、「受け皿がないことが補助金停止の足かせになっていたが、今後は一歩踏み込んでやらねば」という部分について、不適切な事案が発生する放課後児童クラブに仕方なく通わせざるを得ない地域におけるその他の選択肢を用意していくことについて、どのように踏み込んでいきますか?
●放課後児童対策担当課長
新聞記事を通じてというところになりますが、まずは大変な時期に大変な思いをされた保護者さんがいらっしゃること、学童を所管している課長として責任の一端を感じています。
現在、待機児童対策として新規クラブの整備を進めていて、毎年新たに待機児童が出てくるという地区がある中で、既存のクラブに対する他の選択肢として新しいクラブを整備するというところまでは、なかなか難しい状況なのかなという風には考えています。
なので、先ほど来の答弁になってしまいますが、今後不交付を決められるような基準において、可能であれば翌年度以降に不交付とするというようなことを取れるかどうか検討するとともに、それに伴った受け皿の整備というような形で、新たに検討していくのが望ましいのかなと、今の時点では考えています。
▽加藤ゆうすけ
まあそうですよね、当該年度、即時というのは、かなり行政手続き的には、かなりレベルの高いものだと思いますので、可能であれば翌年度以降に不交付というのは、現実的な対応かなと思います。
(3) 3月定例議会での平澤民生局長「私たちもある程度証拠のようなものを積み上げてやっていかなければいけない部分もある」との答弁を受けての課のその後の動きについて
▽加藤ゆうすけ
そして、3月定例議会 代表質問での質疑にもどりますが、民生局長からは、「私たちもある程度証拠のようなものを積み上げてやっていかなければいけない部分もある」という答弁もいただいておりました。その際に局長ご自身もおっしゃってましたが、補助金の交付決定取り消しなどの不利益処分に際しては[2]、かなりシビアな交渉ごとになるというのは私も間違いないと思います。法令に則って、不利益処分と同時に理由を事業者に示さねばなりませんし、聴聞や弁明の機会を設ける必要もあります[3]。
そういうことを踏まえたうえで、証拠の積み上げは行っているのでしょうか?
●放課後児童対策担当課長
まず今回の事案につきましては、クラブに対して先ほど申し上げましたがヒアリングを行って、実態を確認して、すでに改善指導をおこなっています。
今後は、クラブにおいて適切な改善がなされ、またその状態が継続されているかというのが、改善の見込みがあるかないかの判断基準になってくると思いますので、まずそういった意味で、今回の事案というのを積み上げているのかなと思います。
▽加藤ゆうすけ
これで最後にするんですが、私は、この「継続的に不適切な事案が発生するようなクラブ」については、これは考え方としてですけれど、「不適切な事案」が一回でも発生したらもうアウトだとおもっています。傷つく子どもはゼロで当たり前の世界であってほしいですし、何人も退所している時点ですでに異常事態ですし、何も起きていないわけがないので、それはこの年の春に始まった話ではないはずなんですよね。
だとすると、「証拠の積み上げ」は、今ここ時点から未来方向への積み上げだけではなくて、きちんと、過去もさかのぼって、そのクラブについてこれまでどういう相談が課に寄せられていたかという部分については、課長ご自身が一番悩みながらお受け止めになっているはずですから、ぜひですね、過去方向にもしっかりさかのぼって調べたうえでこれからの積み上げというのもやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか?
●放課後児童対策担当課長
過去にすでに市に相談が寄せられていて、その事案に対してクラブに対して改善指導を行っているものについても、合わせて積み上げていきたいという風に思っています。
[1] https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/education/100078/
[2] https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/tetsuzukihou/gaiyou.html
[3] 行政手続法第12条、第13条、第14条 https://laws.e-gov.go.jp/law/405AC0000000088