2021年09月01日
【デジタル社会の実現に向けた人事政策について】(2021年9月定例議会 一般質問その1)
9月定例議会、一般質問の報告です。
■IT化?DX?
「IT化」と言われて既に20年以上が経過しておりますが、コロナ禍を機に「デジタル・トランスフォーメーション(略称は、なぜか「DX」)」が日本では急に(ようやく)進み始めました。
「IT化」というと、例えば、いままでお客さんが紙に手書きした内容を、職員が手書きで表に書き写して一覧をつくっていたものを、お客さんがパソコンの画面に入力さえすれば、あとは勝手に一覧がパソコンの中にできあがる、そんな業務効率化のイメージでした。いわば、目の前の仕事をちょっとスムーズにする感じです。
これに対し「DX」というと、もっと大きく、組織全体のありかたを根本から変えてしまうような大きな改革のイメージです。
こうした変革の波は、民間企業にも行政にもやってきており、私たちの生活も大きく変わろうとしていることは、コロナ禍で皆さんも実感されているかと思います。壊れた道路はLINEで報告すればいいし、東京の本社に週1回行けばあとは家で仕事できるし、料金の支払いはスマホ1台持っていれば大抵何とかなる社会になっている。もうこうなってくると、その組織が何のためにあるのか・どのような組織ならばよりいい仕事ができるのかも、繰り返し問われるようになります。
■横須賀市には、すごい人たちがいる
どうしてもこれまで行政は、デジタル化社会への移行に際して、及び腰でした。行政であっても、部門ごとに見れば、ビジネスのようにある程度限定された利用者を想定できるケースが多いですが、行政組織全体で見たときに、サービスの対象者は「全市民」ですから、そこにはおのずとデジタル機器の苦手な方も多数おり、それも理由としてなかなかデジタル化にむけた職員の意識も進まなかった背景があると思います。
しかし、実は、横須賀市には、デジタル化に向けたすごい人たちが、今まさに、います。
日本経済新聞「神奈川県横須賀市職員の松本さん ICTで「ムダを削減」」2020年8月4日,(最終アクセス日2021年9月1日)※有料記事です
https://www.nikkei.com/nkd/company/article/?DisplayType=1&ng=DGXMZO62233290T00C20A8L82000&scode=9715
庁内ICTに関する改革推進の牽引役・PMOとして、任期付き職員としてICT戦略専門官がご就任されて以来、庁内のデジタル化推進に意欲的な職員の人たちへ、必要な知識・技術を伝え続けてくださったおかげで、徐々に庁内にはデジタル化のための人材が育成されつつあります。
とりわけ、行政のDX,デジタル化に必要なのは、プロジェクトマネジメントの力です。カタカナが続きますが、要するに、色々な人と力を合わせて仕事を前に進めるための、仕事の順序の整理がきちんとできるということです。本市のICT戦略専門官は、このプロジェクトマネジメントに関するプロフェッショナルであり、実務経験も豊富で、かつ他市区町村での改革の実績もお持ちです。本当にありがたいです。当然、こんなにすごいかたがいらっしゃるので、その薫陶を受けられた職員のかたは、既にプロジェクトマネジメントのプロフェッショナルとなりつつあります。横須賀市には、すごい人たちが、いるのです。
だからこそ、「このかたがいらっしゃるうちに、何としても、育ち始めたデジタル化の芽をさらに全庁へと」との思いで今回、質問しました。
■鍵は、「採用」と「仕事の報われ感」
今まさに、DX,デジタル化を目指した人材の育成は庁内でやっています。となると、やはり入口、つまり「採用」でも、デジタル化に向けた人材を本市が積極的に求めていると打ち出すべきです。なぜなら、先述の通り、DXとは組織のありかたを根底から見直すような改革であり、そのためには、デジタル化推進のための職員は、決して「デジタル化担当部署」だけにいればいいという話ではないからです。以下、質疑の引用をご覧いただきたいのですが、要約すると
・業務改革への意欲に富む職員育成と合わせ、DX推進のための職員採用についても検討していきたい。
と、採用面でのDX推進に関する何らかのアピールについて、前向きな答弁が得られました。
―――(以下、質疑の一問目より引用)――
▽(1) デジタル人材の採用について
(ア)デジタル化人材戦略を、育成面だけではなく、採用面からも検討してはいかがか。
▽加藤
現在既に、デジタルトランスフォーメーション(以下DX)のための人材が全国的に不足している中で、自治体としても、デジタル化人材戦略に関しては、育成だけではなく採用時点で適性を見極め積極的に採用するよう検討すべきと思いますが、いかがでしょうか。市長に伺います。
●上地市長
今後さらなるスマート自治体への転換には、行政の知識と、ICT技術を融合させる柔軟な発想が不可欠。そのため、双方の豊富な経験、知識を持つICT戦略専門官を改革のけん引役として配置した。多岐にわたる業務改善・効率化には職員自らが意識的に取り組む必要があり、業務改革への意欲に富む職員育成と合わせ、DX推進のための職員採用についても検討していきたい。
(イ)中途採用において、デジタルトランスフォーメーション(DX)を通じた業務効率化推進の鍵となるプロジェクトマネジメント人材(PM人材)を求めていることを訴えてはいかがか。
▽加藤
PM人材を求めていることを採用ページ・採用試験受験案内に明示すれば、PM人材を本市が重く用い、積極的に育成している風土が庁内外に伝わり、結果的に本市のPMの力は向上します。上地市長としては「人が好きな人」「すぐ動く人」「深く考え、自分の意見を言える人」「なんとかする人」という本市が求める人材像[1]の中で既に示しているとのお考えかもしれませんが、さらにわかりやすく、直接「全庁を俯瞰でき、プロジェクトマネジメントに長けた人材を求めています」と訴えてはいかがでしょうか。
●上地市長
プロジェクトを実施する際には、地域、民間、行政が連携して取り組むことが不可欠であり、PMは包括的にマネジメントできる能力が求められる。関係者と築いた信頼関係、業務に対する深い知識、熱意などが必要であり、それらの多くの経験から身につく。即戦力を期待する中途採用において、求める人材をどのように表現するか今後検討する。
――(一問目の質疑の引用終わり)――
――(ここから一問一答の質疑の引用)――
▽加藤
非常に前向きな、デジタル化人材戦略に関する答弁をいただきました。職員採用の部分でも強化する必要はあり、検討いただけることはありがたいです。具体的には、採用試験区分に、一般事務(デジタル)を設けてはいかがでしょうか。この職員は、決してICT部門への配属に特化するのではなく、デジタル化推進を定着させるために各所管部門に配属されるイメージです。「こういうことも実はデジタルでできて、効率化できますよ」と気づきをもたらしてくれる職員が、全ての部署にいれば、デジタル化はどんどん進むと思います。現状、デジタル・ガバメント推進室がけん引役としてかなりご活躍いただいていたので、どうしても、何か困ったことがあった際に、デジタル・ガバメント推進室に相談してみる→頼ってしまう にならないよう、ぜひ各部門で行ってほしいと思います。千葉市、横浜市など複数の自治体で既にICT・デジタル区分を採用試験区分に取り入れている実例がありますので、ぜひ研究していただければと思いますが、いかがでしょうか。
●上地市長
ぜひ、検討していきたい。
▽加藤
中途採用の部分でも、包括的な力が必要とのご認識・関係者との信頼関係を築く力など、デジタルに限らないところの部分を持つ人材であることが、市長のご答弁から、私の思いと一致していることが確認できました。どのように表現をしていくかは、今後ご検討いただけると思うのであまり細かいお話はしないのですが、いま、PM人材は順調に(庁内で)育ちつつありますので、デジタル・ガバメント推進室のような改革の旗振り役のところだけに置くのではなくて、全ての部において、業務フローを絶えず見直すために配置していく形で取り組んでいただけますでしょうか。
●上地市長
まさにそれは理想で、やりたいことのうちの一つなんですが、今後その方向にできるだけはやく進んでいきたいと思っています。
――(一問一答の質疑の引用終わり)――
■もう一つ大事なこと「仕事の報われ感」
もう一点、これはデジタル化に限らずですが、出来る人にばかり仕事が集中するという問題は、どのような組織でも課題として抱えています。本市も例外ではなく、これを私は課題視しています。しかし、地方公務員は、民間企業職員と異なり、「仕事でものすごい成果を出したらどかーんと奨励金を出す制度をつくろう」とは簡単にはいきません。そこで、まずは、業務量に偏りが無いか、ちゃんと職場ごとに共有するコミュニケーションをとれるような仕組みをつくりましょうと提案しました。答弁としては、ぜひこの通り着実に進めていただきたいと思える良い内容でした:
・頑張る人、チャレンジする人が正しく報われる仕組みは当然必要。そのために、役割や仕事の成果が処遇に反映されるよう人事給与制度を改革したい。具体的に提案をいただいた職員間の業務量の確認のための業務状況の把握や共有化の工夫も各職場でぜひ取り組むべき。
――(ここから一問目の質疑の引用)――
▽(2) デジタル社会の実現に向けて求められる「すぐ動き、深く考え、自分の意見を言えて、なんとかする」職員が正しく報われるような職員間の業務量の偏りが確認できる仕組みを始めてみてはいかがか。
▽加藤
信賞必罰が難しいのであれば、「すぐ動き、深く考え、自分の意見を言えて、なんとかする」職員が正しく報われるように、職員間の業務量に過度な偏りは無いかを、誰もが一目見て確認できるような仕組み、例えば、「先週、誰が、何を、何時間したか」「今週、誰が、何を、何時間するか」を各職場で模造紙や付箋紙に書いて掲示し職員毎の忙しさを把握できるようにする[2]・「今日、何を、何時間するか」を各職場全員に朝一通のメールやグループウェアで一言共有してお互いの業務量についてコミュニケーションを取りやすくするといったような、負担にならず、誰でもいつでもできるものから始めてはいかがでしょうか。伺います。
●上地市長
頑張る人、チャレンジする人が正しく報われる仕組みは当然必要。そのために、役割や仕事の成果が処遇に反映されるよう人事給与制度を改革したい。具体的に提案をいただいた職員間の業務量の確認のための業務状況の把握や共有化の工夫も各職場でぜひ取り組むべき。
――(一問目の質疑の引用終わり)――
――(ここから一問一答の質疑の引用)――
▽加藤
デジタル社会の実現というところから(始めて)、職員によっては業務量が偏るという質問もしましたが、人事給与制度を何とか良いものにしたいとの答弁も嬉しく思っていますし、一方で業務量の把握の工夫も各職場で取り組むべきとのご認識をいただきました。人材がとにかく不足するのがここから将来数十年を見据えて、人口が少子高齢化という構造にある以上、間違いなく本市役所にもやってきます。いまであれば考え難いですが、報われないなと思った優秀な人材は、いったん地方公務員になったものの、違う会社に自分の活躍の場を求めて流出する可能性もあります。その中で、非常にアナログな提案、付箋を貼ったり、模造紙に書いたり、とにかくコミュニケーションをはかろうというお話をしましたが、上地市長も日頃からお声掛けくださっているとは思いますが、心がけだけではなかなかできないので、始業時5分間はこのコミュニケーションに充てる、結果は付箋に書いて貼っておこう、といったわかりやすい声掛けに勤めてほしいですがいかがですか。
●上地市長
ご提案をいただいている以上、よくわかっておりますので、今後色々考えていきたい。それからもう一点、私は、人材は流動的であっていいとおもっています。ここで一生送るのも人生かもしれないけれども、外へ出ても構わないし、外からいい人間が来るという、開放的で、自由な人材によって新しい社会は生まれるし、また行政もそうあるべきだと私は個人的に思っています。それも踏まえて、これからの人材どうあるべきか、業務改善も含めて総合的に考えねばならないので、その意味で仕事はどうあるべきか、今後検討していきます。
▽加藤
人材に関して、流動性ある人材が非常に能力を高めるのによいという方面もあります。決して、一生市役所に根を下ろしてくれというお話をしたいのではなく、今後人材の流動性は高くなるだろうという中で、それでもいていただける場所に、市役所をしていこうという意味での提案であります。ありがとうございます。
――(一問一答の質疑の引用終わり)――
[1] https://www.yokosuka-saiyou.jp/
[2] 例えば、大阪府四条畷市「カエル会議」が参考になる。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58881160Y0A500C2AA1P00/