2021年03月22日

【3億円の猿島トイレ新設の件】(2021年3月4日都市整備分科会と、3月22日 予算決算常任委員会全体会)

 3月定例議会の報告です。代表質問の報告も順に行いますが、昨今話題となった3億円の猿島トイレ新設の件についてです。





 結論から言いますと、我々会派は、この予算案も含む新年度予算に賛成します。ただし、引き続きの費用低減への努力と、入園料(入島料)の値上げなど受益者負担での財源確保の検討を求めたうえで、です。





■事の発端は、2か年で3億2千万円もの整備費が計上されたこと





 私が副委員長をする予算決算常任委員会 都市整備分科会が3月4日に行った、新年度予算の環境政策部所管部分に関する質疑の中で、来年度1億8千万円、2か年で合計3億2千万円もの猿島公園トイレ整備費用を見込んでいることが示されました。













  トイレは、重要です。猿島は、貴重な自然林と旧陸海軍の要塞跡が残る国の史跡であり、観光客も多く訪れますので、トイレの数も必要です。しかし、この議案説明資料を前に、高額な費用について質疑の中で複数の委員が言及しました。





 この時点の質疑で分かったことは、以下の通りでした:





●なぜつくるのか?





近年の来園者増加(2005年頃6~7万人→最近は22万人程度)により管理棟内の既設トイレの浄化能力が不足している。





●何を作るのか





女性用6、男性用個室1・小便器1、バリアフリー1 、入園してすぐの桟橋左側(土地50平米)に新設する。









●なぜ高額なのか





①上下水道の未整備や、設置面積の制限から、水循環方式の生物処理方式を採用するため。





②がけ地に設置するため、建物をプレハブではなく、RC造(鉄筋コンクリート造)1階建てにしたため。





③液状化対策が必要な地盤であり、土留め溝・止水溝・地盤改良溝を追加しているため。





④離島であり、会場運搬経費が掛かるため。









 また、金額の衝撃が大きかったのか、新聞記事でも取り上げられました。





トイレに1・8億円は妥当? 横須賀・猿島に新設で議会論戦





https://www.kanaloco.jp/news/government/article-419861.html









■市民からさらに説明を求める声を踏まえ、締めくくりの総括質疑を行うことに





 記事への反響は大きく、「自分のお金だったらこういう使い方はしない」「観光や、こどものことを考えればちゃんとしたトイレ整備は大切」「離島だから何をするにもお金がかかることは自覚すべき」「必要な整備なので、入園料の値上げで整備しよう」など、様々な意見をいただきました。寄せられたいずれの意見においても、高額な整備費用について何となく文句を言うのではなく、「公共施設とはどうあるべきか」「本市の資源をどう保全活用するか」といった視点が見られたと私は感じました。





 このことを踏まえ、会派で様々話し合った結果、予算決算常任委員会全体会にて、締めくくりの総括質疑を行い、都市整備分科会では明らかにしきれなかった内容について、市長・担当部長と質疑しようと決めました。





 総括質疑は会派単位で行うものではありませんが、今回は嘉山議員に会派を代表して質問していただきました。質疑の結果得られた主な答弁は、以下の通りです:





①高額な海上運搬費は、(本土で組み立て現場に運ぶのではなく)現場での施工を前提に算出しているが、指摘を踏まえ、工程の検討はしたい。





②設置個所が海浜地のため、通常より条件が厳しいことも勘案し、日常管理・計画修繕で長寿命化をはかりたい。





③入園料(要するに入島料です)は、昨今の来園者増によるトイレ増設が急務となったことや、老朽化施設の修繕のため、値上げの必要性を感じている。受益者負担の観点から、これから検討していく。入園料は、将来的に必要な大規模改修の財源とするほか、樹木管理など、来園者に目に見えるよう還元している。同様に、トイレ整備についても、入園料による収入を充当していく。









■受益者負担という考え方





 誰だって、安く何でも使えた方が嬉しいに決まっているのですが、なかなかそうはいきません。経済が右肩上がりならば、借金をしてでも安くして、将来さらに豊かになった際に返済すれば、元が取れるのかもしれませんが、今はそういう状況にはありません。これまでもFM戦略プランなど、公共施設のありかたを考える中で、より多く使う人が、より多く費用を負担すべき性質の公共施設もあるだろうとの議論が進んできました。今回の猿島については、余暇としての観光で訪問する人が多いと考えれば、猿島が将来にわたって環境を維持できるよう、より多く使う人に費用を負担いただくべき性質があると私は考えます。





 今回、答弁で将来の入園料値上げによるトイレ整備費用充当も見えたところで、この猿島のトイレ整備の予算を含む、来年度予算に対し、賛成することに決めたというのが、冒頭申し上げた結論の背景です。


















参考までに、3月22日 予算決算常任委員会全体会での締めくくりの総括質疑のメモをここに記します:





■■■締めくくりの総括質疑(予算決算常任委員会 全体会)





答弁者:市長・環境政策部長





▽嘉山





 議案第15号令和3年度一般会計予算における、環境政策部 公園管理事業の中の猿島公園管理事業について総括質疑いたします。





 本予算案は、猿島にある既存のトイレ混雑を解消すると共に、土日・繁忙期のオーバーユースにより濁った洗浄水を繰り返し使用する、また、それに伴うトイレつまりなどの不具合を解消するためにトイレを新設することで、島内で快適に過ごしてもらうための事業です。令和3年度から4年度にかけて継続しておこなう事業ですが、総額約3億円と通常より高額な予算を計上されていることに、今回都市整備常任委員会の中でもほぼ全ての委員から質疑が交わされました。猿島の現状を考えた時、新たなトイレ設置の必要性は我々も理解しますが、その予算の根拠と妥当性について、そして今回のトイレ新設が本市のファシリティマネジメントの考え方に沿うものなのか、市長・環境政策部長にあらためて確認する必要があると思い、総括質疑させていただきます。





【猿島公園のトイレ新設工事にかかるコストについて】





▽嘉山





はじめに、トイレ新設にかかるコストについてお聞きします。本事業は、離島である猿島に設置することからコストが通常よりも高くなることは理解しています。しかしながら、トータル3億円かかるとわかり、正直驚きました。まずは、この予算の内訳をあらためてお聞きします。また、財源の内訳もあわせてお聞かせください。





●環境政策部長





工事費内訳は、トイレ自体は6000万円、地盤改良に5000万円、上下水道が無いため浄化し再洗浄するための設置に9000万円と資材の運搬に1億円、合計約3億円。財源内訳は、事業費のうち猿島基金4000万円、市債2億6000万円。地方交付税8000万円が見込まれるので、市実質負担は1億8000万円。





▽嘉山





費用の内訳としてトイレ自体は6000万円、地盤改良に5000万円、浄化槽の設置に9000万円と資材の運搬に1億円となることが分かりました。また、財源は猿島基金と交付税処置で市の実質負担は1億8000万円ということも分かりました。そこで、市長はこのことをどう受け止め、所管部局とどのようなやり取りがあったのか、お聞かせください。





●上地市長





正直なところ、部から最初に説明を受けた際に、あきれ、激怒しました。この時期に、本当にこの金額で市民に納得いただけるのか悩みました。しかし、今回のトイレは華美なものではなく、バリアフリーを備え必要なものであり、かつ史跡を避けるため高額になると説明を受けました。





▽嘉山





費用をより低く抑えるための検討などはされていると理解するところではありますが、多くの方は費用の高さはもちろんだが、なぜこの時期にという思いもあるのも事実です。市長として率直にどのようなお考えから踏み切られたのか、お聞かせください。





●上地市長





おっしゃる通りだと思います。言わずもがな、猿島は首都圏にあり気軽に楽しめ、市内外のかた問わず人気です。1年あまりコロナ禍でプロモーションできず、観光都市としての更なる発展のために空白の時を取り戻したい。また、工事期間として8か月必要であり、今年10月の繁忙期後から工事開始しても、完成が来年5月になるため、今から早急に取り組むため、当初予算に計上することを決断した。





▽嘉山





新型コロナウイルス感染症の終息はまだ見られないながらも、ワクチンの接種が始まるなど、出口戦略として市内経済対策のテコ入れが必要だとは感じています。また、観光が市内経済の活性化に大きく寄与することからも関連施設整備の必要性は理解します。しかしながら、さらなる経費の低減は出来ないものなのか?我々からもいくつか提案させていただきたいと思います。





  • 海上運搬経費の見直し(現在1億円)




まずは海上運搬経費についてです。島外である程度を組み立て、台船で運搬し、現地での工数を減らすことで台船の往復回数を減らし、1億という経費を低減させられるのではないかと考えますが、そのような検討はされたのでしょうか。また、されていないのであればぜひ検討し折り込んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。





●部長





高額となっている運搬費は現場施工をもとに算出しているが、ご指摘を踏まえ、工程の再検討をおこなっていく。





  • 浄化システムの見直し(現在0.9億円)




次に、浄化槽についても伺います。浄化槽は水循環式バイオ水洗トイレと答弁がありました。様々なメーカーが技術を持っている中で9000万円は少し高いと感じています。循環処理させる際、土壌や牡蠣ガラ、木質、プラスチックなど多様な手法がある中で、それぞれのコスト比較はされたうえでの想定となっているのでしょうか。また、これもされていないのであれば検討していただきたいと思いますがいかがでしょうか。





●部長





浄化システム選定に当たっては島の特性を参考に、山岳トイレに使われるものを採用した。コスト比較はした。設置面積、電力インフラ状況なども加味し、総合的に選定した。





【本市のファシリティマネジメントの考え方との整合性について】





▽嘉山





国の史跡指定の関係上、島内の設置場所がかなり限定される中で、その中でもできるだけ海辺から離れた場所ということで桟橋の根本あたりを設置場所に選定されています。それでも海から近いことには変わりありません。そこで、通常より強いRC構造を採用したようですが、新設トイレの耐用年数は何年ぐらいを想定されていますでしょうか。





●部長





 一般的なRC造から言えば本体50年、浄化システムはメーカー実績から30年程度。





▽嘉山





実績から答弁いただきました。たしかに、海の目の前なので明確な耐用年数を出すことは難しいかもしれませんが、通常RC造の建屋は50年、水循環方式での浄化システムは30年程度持つとされるが、風水害などのさまざまなリスクを考えると、日常の管理計画をしっかりと策定し実行すると共に、それをもとにした計画的な修繕を織り込む必要があると考えるが、いかがでしょうか。





●部長





 ご指摘の通り、設置個所が海浜地のため、通常より条件が厳しいことも勘案し、日常管理・計画修繕で長寿命化をはかりたい。





▽嘉山





先ほど初期投資としてのイニシャルコストについてお聞きしましたが、維持費としてのランニングコストについてもお聞きします。猿島内の既存トイレに加え、今回の新設予定のトイレにおいて、もちろん点検などのメンテナンスや汲み取りなどは定期的に実施していくこととなると思います。そのメンテナンス・維持費は年間どれ程度かかる試算をされていますか?





●部長





既存トイレでは土壌水槽の点検と汚泥の汲み取りを含めて、年170万円。新設トイレは340万を想定。繁忙期仮設トイレ代が300万円これまでかかっていたが、これが不要となるので、実質的には+40万円。





▽嘉山





ぜひ、しっかりと管理していただき、耐用年数が極端に短くなるようなことにはならないよう徹底していただきたいと思います。





次に、通常よりも嵩んでしまうイニシャルコストとランニングコストに対する財源確保方法についてお聞きします。今現在、猿島の保全は猿島公園入園料や猿島基金によって賄われています。つまりは、猿島を利用する人々みんなの協力のもと成り立っています。今回のトイレ新設においてもその考え方を踏まえ、設置や維持管理が行われるべきと思いますが、今回のトイレ新設等における入園料の値上げは検討されなかったのでしょうか。お聞きします。





●部長





 入園料値上げは、昨今の来園者増によるトイレ増設が急務となったことや、老朽化施設の修繕のため、値上げの必要性を感じている。受益者負担の観点から、これから検討していく。





▽嘉山





検討いただけるという事ですが、新設されるトイレのおおよその嵩んでしまう費用分と維持費については、念のため確認ですが、これまで同様に利用者全員の協力のもと、整備がされていくことに間違いないでしょうか。





●部長





 猿島公園入園料は、将来的に必要な大規模改修の財源とするほか、樹木管理など、来園者に目に見えるよう還元している。同様に、トイレ整備についても、入園料による収入を充当していく。





▽嘉山





受益者負担で多くを賄っていくことが分かりました。入園料の値上げについては、繁忙期と閑散期などのシーズンによって差をつけることや、市民と市外の観光客などを考慮して変化をつけることも一考に値するのではないかと考えますが、いかがでしょうか。





●部長





 今後検討する中で、前向きに検討したい。





【猿島のさらなる魅力向上に対する市長の考えについて】





▽嘉山





今までの質疑から、本市のファシリティマネジメントの考え方から外れたものではないと理解します。とは言え、3億円という金額は決して小さいものではありません。引き続きのコスト低減を努力いただきたいと思います。





猿島は本市が有する貴重な資源であることから、その保全をしっかりとおこなっていただき、猿島という地域資源を多くの方に来て良かったと思ってもらえるように管理運営に努めていただきたいと思います。そういった意味で、猿島のさらなる魅力向上について、最後に市長のお考えを伺い、総括質疑を終わりたいと思います。





●上地市長





 私は猿島は非常に神聖な場所だと以前から思っています。そして横須賀市民の貴重な財産です。この貴重な財産の活用をしたい一方で、神聖ともいえる場所の保全にしっかり努めたい。賑わいと環境のバランスをとる。これからも魅力向上に努めたい。


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