2023年01月29日

【ついに県内最下位になった管理職女性割合】

【ついに県内最下位になった管理職女性割合】

 
1月20日、第4回男女共同参画及び多様な性の尊重に関する審議会を傍聴しました。
「第6次横須賀市男女共同参画プラン~ジェンダー平等と多様な性を尊重する社会を目指して~ 2023年度~2026年度」(以下、次期プランとします)の内容、特にコラムとして挿入される情報について、審議されました。
 2月の審議会を経て、市長に答申がなされ、市が内容を最終決定し、今年4月1日から計画期間が始まります。
 

■ついに県内19市最下位になった管理職女性割合

今回の審議会では、ついに県内最下位になってしまった、本市の管理職女性割合について議論が盛り上がりました。
 
内閣府は毎年4月1日時点で、1741市区町村の男女共同参画社会形成に関する情報を取りまとめ、公開しています。昨年末公開された年次報告で、横須賀市の管理職に占める女性割合が、県内19市で最下位となりました。わずか9.4%、人数にして18名しか、女性の管理職(課長以上の役職)が、いません。この4年間、毎年このことは会派や私の議会質問で取り上げ、急ぎ取り組むことを求めていました。改善どころか、ついに最下位となったことについては非常に残念に思っていましたが、この日の審議会でもこの事実を前に、委員長から「県内19市で横須賀市が最下位ということこそ、注目すべきところ」と指摘がありました。資料には特段 「県内最下位」 との記載はなく、議題にも無かったにもかかわらず、委員長が指摘したことに、重みを感じます。
 
当然、他の委員からも「女性がやる気がないのではない」と、この問題が女性の生得的な資質や能力、ましてやる気が原因なのではなく、制度的・社会規範的なジェンダー不平等こそ改善すべき点と指摘があり、大いに議論が盛り上がっていました。
 

 


■詳しくデータを見ていくと、事態はもっと深刻である

 内閣府の資料を見ていくと、事態がさらに深刻であることがわかります。
横須賀市の課長補佐相当職の女性割合は16.5%(総数182名に対し女性30名)、係長相当職の女性割合は16.6%(総数506名に対し女性84名)にとどまります。いずれも、県内最下位クラスです。大幅な人事制度改変を行わない限り、いきなり課長以上が増えるということはありませんから、仮に係長の方々が、10~15年かけて課長にそのまま昇任したとしても、現在の管理職女性割合の県内平均(17.8%)に届かない可能性もあります。




  また、過去の傾向を見ても、横須賀市は、管理職、課長補佐、係長、いずれも県内他都市より大きく下回る女性割合です。

 現在の形で統計を公表し始めた2015年の情報を見ても、女性割合はそれぞれ、
・管理職6.1% (県内平均13.4%)
・課長補佐10.7%(県内平均21.2%)
・係長14.9%(県内平均26.2%)
であり、正直、「ずっとほぼ最下位」でした。ここからも、現在の施策が続いたところで、少なくとも県内他都市並みにすらなれないと想定できます。



 
 

■「30%」を超えることが、意義あること

 現在、横須賀市としての管理職女性割合の目標は、「2025年度までに20%」[1]です。先述の理由から、現在の取り組みの延長では、この目標値は達成不可能であると予想されることはご説明した通りです。しかし、20%どころか、もっと高い「30%」が、意義ある目標値として、一般には意識されていると敢えて書き残しておきたいと思います。
 
「一般に」というのは、ジェンダー平等を巡る議論において、組織における女性割合が30%を超えることを、「クリティカル・マス(critical mass=臨界量)」という考え方をもとに目標としていることを指します。
 
1970年代のアメリカ大企業で働く女性が正当な扱いを受けない原因を、数がそもそも少なすぎることであると分析した研究があり(Kanter 1977)[2]、これに触発され、物理学に言う「クリティカル・マス」、つまり、この数字を超えると一気に変化が生ずるという値に着目して、女性議員のクリティカル・マスを、議会内の女性割合が30%を超えると議会に質的な変化が生ずるのだと論じた研究があります(Dahlerup 1988)[3]。この「30%」という値が、議会内代表としての女性議員割合についての分析のみならず、社会の様々な組織における女性割合についても援用され、現在に至っています。
 
いろいろ述べましたが、要するに、「まず3割超えよう」ということで、ジェンダー平等を目指す人たちは認識しているぞということです。
 
 こうした背景もあり、日本政府は「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度になるよう期待する」という目標を2003年に掲げ、取り組んできました。ここでいう指導的地位には、「法人・団体等における課長相当職以上の者」も含まれます[4]。本来、国も、横須賀市も「30%」を掲げていなければ、先述の理論と不整合ということになりますが、現状の数値からあまりかけ離れた目標設定をしても到達できませんから、国は「市町村職員の各役職段階に占める女性の割合:本庁課長相当職22%(2025 年度末)」[5]とし、横須賀市は現状が酷いので少し少なめの「20%」となっています。
 
ちなみに、この「2020年30%」(俗に「にーまるにーまるさんまる」と呼びます)、全く達成できませんでした。この未達の反省の上に、国の「第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~」は作られて、2021年から計画期間に入っています。
 
 

■もういいかげん、思い切ったポジティブ・アクションをやりましょう

 以上、様々述べましたが、私が繰り返し上地市長に求めたいのは、「もういいかげん、思い切ったポジティブ・アクションをやりましょう」ということです。
 
 ポジティブ・アクション(積極的差別是正措置)とは、社会的・構造的な差別によって不利益を被っている者に対して、一定の範囲で特別の機会を提供することなどにより、実質的な機会均等を実現することを目的として講じる暫定的な措置のことをいいます。この中の一つとして、クオータ制度(性別を基準に一定の人数や比率を割り当てる手法)があり、これをよこすか未来会議、加藤ゆうすけ、ずっと求めてきました。
 
もう、研究、検討と、悠長なことを言っていては、いつまでたっても女性割合が増えないことは明白です。課長になる前の段階の人たちである、課長補佐、係長、主任など、各段階に昇任させる人数を、必ず男女同数にするくらいのジェンダー・クオータを講じなければ、達成は見えてきません。現任期最後の定例議会も、よこすか未来会議一丸となって質疑に臨みます。
 
 
―――――
<参考までに:昨年の加藤ゆうすけ代表質問>
上地市長
「次に、ポジティブ・アクションについてです。
 まず、あらゆる差別や偏見をなくすことは当然のことであり、個人の能力、努力によらない格差は絶対にあってはならないと考えています。議員御提案のポジティブ・アクションに基づく取組については、多様な人材の発想や能力を生かすことでバランスの取れた質の高い市民サービスの提供に一定の効果があると私も考えています。均等な機会や待遇を確保するというポジティブ・アクションの考え方に基づいた措置の導入につきましては、引き続き研究してまいります。
 次に、クオータ制についてです。
 ただいま答弁しましたポジティブ・アクションの導入について、まずは課長級以上の女性比率向上のための手法の一つとして研究していきたいと考えています。性別を問わず、やる気のある職員を積極的に登用していくことは当然であると思っていて、そういった職員が管理職として政策方針決定過程へ参画することは必須だと考えています。本市では女性活躍・子育てサポートプランを策定し、令和7年度までに課長級以上に占める女性割合を20%とする数値目標を挙げています。現在本市の課長級以上に占める女性の割合は9.9%にとどまっております。
 まずはこうした目標を達成するためにも、クオータ制を含むポジティブ・アクションの活用を含めた検討を行い、男女共同参画、女性活躍社会の実現に向けて取組を進めていきたいと考えています。」
 
――――
◆2番(加藤ゆうすけ) 私も自由主義で多様性が大切だと思っているのですが、ジェンダー平等の推進をしていく上で、制度を変えて意識を変えるというお話を何度も私は多分市長と質疑をさせていただいたのは御記憶にあるかと思うのですが、ジェンダー平等の推進はジェンダーにまつわる社会的な構成、フェアネスというかジャスティスというか、確保しようとするものだと思うので、憲法第14条がある以上は当然法律上の平等というのは一定程度担保されていますから、課題の所在というのは法律で掲げることと現実の間、つまり社会的な慣習ですとか風土ですとか慣行の次元にあると思うのです。
 そういったポジティブ・アクションは、歴史的に形成された力関係の不平等に対して一定の範囲で特別な機会を提供してそれを是正することが目的なので、ポジティブ・アクションそのものが目的ではなくて、それで課題を解決する。誰かを特別扱いすること自体が目的なわけではないと思うのです。
 なので、ポジティブ・アクションを男性に対する差別だというように捉えるのは全く論外であって、ポジティブ・アクションにはデメリットもあるよという考え方自体に、そういった考えに陥ってしまうこと自体に、恐らく市役所内のそういった考えをもし持っている方がいらっしゃったら、総務人事諸制度を形成する上での市長の頭で分かっていて、心で分かっていないという無意識の偏見が潜んでいると思いますので、ぜひその点は繰り返し市長からも伝えていただけないでしょうか。
 
○副議長(伊関功滋) 上地市長。
 
◎市長(上地克明) そこが難しいので、倫理だとか道徳だとか、恐らく宗教観だとかも含めてのそういう問題に突き詰めなければ多分答えは出てこないのではないかと思っているのです。みんな違う環境で育ってきて年齢も違ったときに、ある現象面、事象をもってこれはこうだよという説明ができない限りその問題は多分解決しない。相変わらずいろいろなところではモグラ叩きのようなことを職員でやっていかなければいけないという事実があると、本質的に分かるというのは非常に難しいのではないかと思っているのです。
 だから、ポジティブ・アクションというよりもとにかくまず市長室に持ってきたので、その上でそれぞれが政策、施策、いろいろな考え方を聞くから、その上でこれはこうなのだよと具体的にやっていくしか私は方法はないのではないかと今でも思っています。
 
 

[1] 横須賀市. 2021. 「横須賀市特定事業主行動計画 女性活躍・子育てサポートプラン」  本計画は2021年4月から2026年3月までの5年間を対象期間としています。
[2] Kanter, R.M. 1977. Men and Women of the Corporation. NewYork: Basic Books
[3] Dahlerup, D. 1988. ‘From a Small to a large Minority: Women in Scandinavian Politics’, Scandinavian Political Studies 11 (4)
[4] 内閣府男女共同参画局「ポジティブ・アクション」https://www.gender.go.jp/policy/positive_act/index.html#:~:text=%E5%86%85%E9%96%A3%E5%BA%9C%E7%94%B7%E5%A5%B3%E5%85%B1%E5%90%8C%E5%8F%82%E7%94%BB%E5%B1%80%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%80%81%E7%94%B7%E5%A5%B3%E5%85%B1%E5%90%8C%E5%8F%82%E7%94%BB,%E6%9C%80%E3%82%82%E5%8A%B9%E6%9E%9C%E7%9A%84%E3%81%AA%E6%96%BD%E7%AD%96 (2023年1月29日最終アクセス)
 
[5] 内閣府「第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~」

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