2019年08月24日
「永住人口」…多死社会で、お墓を、どうする?
【「永住人口」…多死社会で、お墓を、どうする?】
8月23・24日、「第35回自治体学会政策研究交流会議・第33回自治体学会」に出席してきました。今回は、ひとりでの視察でした。1泊2日で多数の学びを得られましたので、議会活動を通じて本市に還元いたしたく思います。
(東京大の金井先生や、法政大の廣瀬先生や、中央大の礒崎先生や、大津市議会局の清水次長など、地方自治論や自治体行政学をやっていれば誰でも知っている著名な研究者・実務家との出会いがたくさん…!)
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■墓地行政、どうする?
期間中に参加したパネルディスカッションのテーマの一つが、「無縁化時代の墓地行政~政策法務の視点から~」でした。
東アジアでは、墓地を「家」で代々引き継ぐ文化をもつところが多く、日本もそうです(そうでした)。しかし、核家族化、高齢者の急増、人口の流動化などによって、引き継ぐ人がいなくなったり・どこにいるのかわからなくなったり、あるいはわかっているけど放置されていたりという理由で、いわゆる「無縁墓」が増えるという懸念が近年強くあります。
「墓」とだけ聞くと宗教性を帯びるように思いますが、墓地をしっかりと管理することは、公衆衛生(まちを清潔にし、病気を蔓延させたりしないようにする)の観点からも国や自治体に責任があります(※1)。
また、墓に対する意識も多様化し、散骨・樹木葬などの弔いかたも多様化しています。そして私も「合葬墓や自然葬など、個人所有の墓以外の最後の在り方を人・ペット共に選べるようにします」というのを政策として掲げていたりもします。(※2)
今回のパネルディスカッションでは、
- パネリスト
西村 浩さん(船橋市環境部環境保全課長)
日比野 至さん(多治見市環境文化部環境課長)
- コメンテーター/パネリスト 塩浜 克也さん(佐倉市総務部行政管理課副主幹)
- コメンテーター 神崎 一郎さん(衆議院憲法審査会事務局総務課長)
- コーディネーター 小島 聡さん(法政大学人間環境学部教授)
が、墓地行政について様々な視点から、実例も上げつつお話をされていました。
冒頭にコーディネーターの小島先生が「お墓を問うということは、「永住人口」問題といえる。この問題はかなり幅が広い。政策法務だけでも相当なボリュームがある。」とおっしゃっていた通り、墓地行政としてだけではなく、福祉政策・土地利用政策・文化政策などを巻き込んだ総合政策としての色合いが強いことに改めて気づいた一幕でした。
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■横須賀市は、市民の死後については熱心に考えている
横須賀市はすでに「期限後合祀型合葬墓」という、合葬施設内の棚に20年間保管し、その後は他の遺骨と合わせて合祀施設に入れるタイプの墓を市営墓地に作っています(次回の募集は2020年です)。
また、横須賀市役所は、「エンディングプラン・サポート事業」として、ひとり暮らしで頼れる身寄りがなく、月収18万円以下・預貯金等が225万円以下程度で、固定資産評価額500万円以下の不動産しか有しない高齢者等の市民に対し、いわゆる「終活」の支援をしていることでも、全国的に知られています。
そのうえで、今回の話を聞きながら私が思ったのは、
・「葬送の自由」はどこまで認められるのか?多様化するニーズはどこまで認められるべきか?
・墓の管理を「家制度」という私的領域へどの程度依存し続けるべきか?行政としての取り決めは?
・散骨は、埋葬にも埋蔵にもあたらない。したがって、墓地埋葬法の対象外であるが、故人の意思確認、焼骨の状態(どのくらい粉にすればいいの)、散布場所、いわゆる「散骨ビジネス」への対処など、どうすべきか?
…などなどです。いろいろと調べながら考えてみたいと思います。
※1 墓地埋葬法第1条には、「この法律は、墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的とする。」とある。
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323AC0000000048
※2 http://katoyusuke.net/wp-content/uploads/2016/10/%E3%80%90%E5%8A%A0%E8%97%A4%E8%A3%95%E4%BB%8B%E3%81%AE%E6%94%BF%E7%AD%96%E9%9B%86%E3%80%912019%E5%B9%B44%E6%9C%88%E7%89%88.pdf