2018年05月16日
子宮頸がんと、ワクチン
■子宮頸がんと、ワクチン
子宮頸がんとワクチンを巡る話を、耳にしたことのあるかたも多いのではないでしょうか?
今回のブログは、横須賀市議会における、子宮頸がんとワクチンを巡る話です。
私は、子宮頸がん対策として、ワクチンを接種することに、賛成です。
なんでわざわざそれを表明するの?という理由を、今日のブログで記していきます。
■きっかけは、所属している協議会での協議
私、「がん対策検討協議会」にも、所属しております。
以前のブログ(http://katoyusuke.net/2017/07/15/170714/)でもお伝えした通り、議会には5つの常任委員会があります。
この他にも、議会運営をスムーズに行うため、議事の取り扱いや、会期の決定などを事前に行う「議会運営委員会(通称:ぎうん)」や、特定の目的について検討を行うための場として、各種協議会・会議があるのです。
加藤ゆうすけは、
- 都市整備常任委員会(5月17日まで)
- 予算決算常任委員会(議員全員所属するものです)
- FM戦略プラン審査特別委員会(公共施設等のありかたを考える会議です)
- がん対策検討協議会
の4つに所属しています。
先月27日に第4回、そして昨日(5月15日)第5回となるがん対策検討協議会が開催されたのですが、ここで議題に上がったのが「及びワクチン接種」という文言を条例案に入れるか否か でした。
■がん対策検討協議会では、「横須賀市がん克服条例」をつくることを目指して話し合っている
がん対策検討協議会では、今年(2018年)9月定例議会へ、「横須賀市がん克服条例」案を上程することを目指し、条例案をもとに、話し合いをおこなっています。
条文の案を一条ずつ検討するので時間がかかります。また、本市の医療に関わる専門家をお呼びしてご講話いただいたり、市執行部の所見を伺ったりなどのプロセスも経ています。
そして、先ほど述べた「及びワクチン接種」という文言を条例案に入れるか否か という論点にたどり着きました。
---------以下、横須賀市がん克服条例(案)------------
第6条第2項
市は、感染により発症するがんについて、除菌及びワクチン接種等による対策を講ずるとともに、性別、年齢等に係る特定のがんについては、その予防に関する啓発及び知識の普及等の具体的な予防策を講ずることとする。
------------------------案 終わり-----------------------------
今回の、がん克服条例の案づくりに際して、案の提出者である自由民主党は、一つ、シンボルのような存在として「胃がん対策としてのピロリ菌対策」を掲げています。ピロリ菌は、胃がんの原因の99%とされており、菌なので、感染を防ぐことと、感染したら除菌することが対策となるわけで、この条文案に「除菌」の文字が出てきます。
ピロリ菌については今回割愛しますが、この条文では、感染で防げるがんの一つとして、子宮頸がんが念頭にあり、その対策として、「ワクチン接種」を条例文中に明記するかどうかが、論点となったのでした。
■子宮頸がんと、ワクチンを巡る論争
ネットやメディアで、子宮頸がんとワクチンを巡る論争について耳にされたかたのほとんどは、
「副作用(正確には 副反応 といいます)がこわい」
というものかとおもいます。
子宮頸がんは、年間約2900名の女性の命を奪う、がんです。しかし、HPV(ヒト・パピローマ・ウイルス)というウイルスが原因であることが多く、そのウイルスへの感染をワクチンで防げます。つまり、ワクチンで防げる、がんです。
そこで、厚生労働省が、この子宮頸がんを防ぐためのワクチンを、定期接種(接種すべきなので、国と地方自治体が費用を出すワクチン)としました。
しかし、副反応を訴える人の声が、メディアで大きく取り上げられ、厚生労働省は「積極的勧奨を控える」(接種する年齢の人がいる家に、お知らせなど送ることを止める)よう通知を出し、その結果、ワクチンの接種率が激減した…という経緯を踏んでいます。
今回の、がん対策検討協議会においても、この「副反応こわい」の話が持ち上がり、「及びワクチン接種」を消したほうがいいんじゃないか…という協議の途中で、第4回の協議が終了しました。
■エビデンス(証拠)に基づいて判断しよう
これまでも、駒崎弘樹さん(認定NPO法人フローレンス代表理事)のブログ(https://www.komazaki.net/activity/2018/01/post7255/)や、その他多数のメディアで紹介されていることですが、私は、このテーマに限らず、政策づくりは、「エビデンス(証拠)に基づいて、政策判断をしよう」という点に尽きると思っています。
医療者ではないため、医療者以上に慎重になる必要はあると思っていますが、それでもなお、この子宮頸がんを巡るワクチン接種の是非については、私は、接種したほうがいいと思っています。
第5回の協議においても、以下の通り、意見を述べました:
--------------------第5回の協議で述べた意見(概略)------------------------------
解釈中にある通り、「子宮頸がんの発生とHPVの間に科学的な関係性があることについては、国も認識して」います。HPVワクチンの有効性と安全性に関する検証も進んでおり、医学論文を総合的に評価するイギリスの民間非営利組織コクランが5月9日、子宮頸がんなどを予防するHPVワクチンの有効性と安全性に関する評価結果を公表しました。
過去8年間に発表された日本や他国の26件の比較試験を評価した結果、同ワクチンにより、がんの前段階の異常は接種群で有意に減少しており、ワクチンの予防効果には高い確実性があると結論づけ、一方で、副反応は非接種群、接種群ともに約7%とほぼ同じで「同ワクチンが深刻な副反応を起こすとの証拠は見られなかった」としています。
この検証は、ランダム化比較実験のメタアナリシス、すなわち、ワクチンを接種した接種群と、偽薬を接種した非接種群をわけた比較実験の結果を分析した結果26件を、さらに分析した、「分析の分析」であり、エビデンスレベルが最も高いと言えます。
また、この評価結果以前にも、接種群と非接種群で、副反応(自己免疫疾患など)に有意な差は見られないという調査もあります。
がんは、がんに病変する前の状態であると診断されるだけでも、本人にとって強いストレスとなります。ワクチンによって、防げることの重要性を考えれば、「ワクチン接種」という方法を条文中に明記する意義は高いと考えます。よって、残すべきであると考えます。
--------------------第5回の協議で述べた意見(概略)-終わり--------------------------
結果として、全ての会派の意見は一致し、「及びワクチン接種」は条文中に残すこととなったので、一安心しています。