2018年01月28日
【はよう、まいらしてほしいわ】
【はよう、まいらしてほしいわ】
■横須賀市が、このほど「横須賀版リビング・ウィル」という冊子を作成しました。
- 市のwebサイト「横須賀版リビング・ウィル」を作成しました(2018年1月24日)
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/3120/nagekomi/20180124yokosukalivingwill.html
横須賀市は、在宅療養を望むかたが安心して在宅療養・看取りを選択できるよう、平成23年度から取り組んでいます。横須賀市における在宅死亡率が全国でトップになったこと(※1)が以前話題に上りましたが、取り組みの一つの結果(成果)だと思います。
で、「リビング・ウィル」とは、人生の最終段階における医療に関して、事前に意思表示しておくものです。横須賀市には在宅療養連携会議という、医療・介護・地域の関係者が集まり議論する場があり、この会議が企画し、横須賀市で発行した冊子「リビング・ウィル~最期の覚え書~」の配布が始まりました。
■「みんなで支える在宅療養シンポジウム」を拝聴してきました
そんな取り組みの一環で開かれた「みんなで支える在宅療養シンポジウム」を拝聴しました。
基調講演は、東近江市永源寺診療所 医師 花戸貴司(はなと たかし)様でした。滋賀県の南東部、三重県との県境に位置する、滋賀県東近江市永源寺地域(旧永源寺町)にある診療所のお医者さんです。地域の保健センターと協力しながら、地域包括ケアを提供されています。
対象人口は5,400人、高齢化率34%。医師1名、看護師4名の無床診療所(=入院できない)ということで、人口40万人の横須賀市とは少し状況は異なるものの、「地域包括ケア」を考える上でのヒントはたくさんありました。
■在宅医療のチームでの、薬剤師さんの重要性
永源寺地域の薬局は少なく、丸山薬局というところにほとんどが通うので、薬剤師と協働し少し大きいサイズのおくすり手帳を独自につくったそうです。おくすり手帳には、その日の診療内容を印刷したものを貼ってもらえるようにして、永源寺診療所以外の病院にかかるとき、必ず持参してもらうようにしています。
患者さんとのやりとりも、全てこの紙に書いていて。すべての患者さんに対して、「寝たきりになったどうしますか?」と尋ね、その答えを書き込んでいます。9割が「自宅にいたい」と答えていらっしゃるそうです。
また、ある時は、ある認知症のかたに関して、関係者による連携会議を行い、薬局でその日飲む薬を小分けにし、ヘルパーが飲み忘れの有無を確認するというフローが出来上がったそうです。
■自助・互助・共助・公助 のつながり
- 自助:自立支援、セルフケア、社会参加
- 互助:ご近所、ボランティア、家族
- 共助:医療保険、介護保険、年金
- 公助:生活保護、低所得者への支援
と、ケアを分類したうえで、花戸先生の思う「連携」は、これらが「縦にドーンとつながる」連携であり、医療者のやるべきことは、医療のレベルをあげることだけではなく、互助と共助の隙間を埋める地域のつながりをつくることだとおっしゃっていました。
■市がやるべきこと、やったほうがいいこと、やらなくてもいいこと、やるべきではないこと
「願う最期を、願う通りに迎えられるようにするためには、暮らしを変えねばならない、地域を変えねばならない」と、進行役の千場純先生が会の最後におっしゃっていました。私は、「願う最期を、願う通りに迎えられるようにするため」という目的のもと、在宅医療・看取りの推進は、市がやるべきことだと考えています。
※1 横須賀市における在宅死亡率が全国でトップに!(2016年7月8日)
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/3120/nagekomi/20160708zaitakushibouritsu.html
2014(平成26)年1月から12月、人口20万人以上の都市で、「自宅死の割合」が22.9%となり、全国第1位。
なお、
2015(平成27)年は21.1%で第3位(1位葛飾区23.5%、2位市川市21.4%)
2016(平成28)年は22.6%で第2位(1位葛飾区23.7%)でした。
※2 ブログタイトル【はよう、まいらしてほしいわ】
ですが、花戸先生曰く、「『はよう、まいらしてほしいわ(=早く死なせてほしいわ)』と患者さんに言われた言葉の意味が、18年経ってようやく何となくわかってきた。年老いても自分らしく過ごしたい、病や老いにあらがうより、悩み、受け入れることが大切である、ということだと思う」