2022年11月11日

【総務常任委員会の県外視察】2022年11月8,9,10日

【総務常任委員会の県外視察】2022年11月8,9,10日

 常任委員会では、年に一回、所管することに関連する県外他都市の取り組みを見学に行きます。(所管事務調査、といいます)





 私が委員長を務める総務常任委員会では、11月8,9,10日、以下の取り組みについて学びに伺いました:





①東京都世田谷区:若者政策について





②長崎県長崎市:まちぶらプロジェクトについて





③山口県山口市:中心商店街における地域福利増進事業









 今回のブログでは、若者政策についての部分を記します。





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まず、世田谷区の若者政策見学の背景については、議会局の担当職員がまとめてくださった記述があまりにも的確なので、そのまま引用します:





「世田谷区では平成 25 年に若者支援担当課(現子ども・若者支援課)を創設し、中高生から 39 歳までの若者を支援の対象としている。





 その理由として、中高生、大学生、あるいは社会人の若者たちについて行政との接点が薄いことをあげている。出産のときから小中学校までは比較的、行政との関係はあるが、高校以降は直接のつながりができない時期が長く続き、20 代も含めてその間空白ができる。





 その一方、平成 20 年のリーマンショック以降、就職などにおいて若者は苦しい状況に陥っている。その支援を行うため、中高生、大学生、あるいは社会人という若者の表現の場所、活動の場所を作り行政とのつながりを作るという政策を行っている。
 今回の視察では、その世田谷区の若者政策、特に若者と行政のつながりを生み出す、若者が当事者として主体的になれる施策について、お聞きする。また具体的な施策として、若者の居場所、そして接点を作り出す「希望丘青少年交流センター(アップス)」の話をお聞きし、その施策について学ぶ。
 また、当施設は中学校跡地に複合施設として開設されており、その検討経緯なども併せてお聞きする。」





https://www.dropbox.com/sh/ptjfrvr4f598mjl/AAAW0v4rXX8o2kYJ1L0u6Vrva/05-%E7%B7%8F%E5%8B%99%E5%B8%B8%E4%BB%BB%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A%EF%BC%88%E5%88%86%E7%A7%91%E4%BC%9A%EF%BC%89/05-%E4%BB%A4%E5%92%8C4%E5%B9%B49%E6%9C%88%E5%AE%9A%E4%BE%8B%E8%AD%B0%E4%BC%9A%E8%A3%9C%E6%AD%A3/02-%E5%B8%B8%E4%BB%BB%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A?dl=0&preview=90-01+%E4%BB%A4%E5%92%8C%EF%BC%94%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E7%B7%8F%E5%8B%99%E5%B8%B8%E4%BB%BB%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A%E3%80%80%E6%89%80%E7%AE%A1%E4%BA%8B%E5%8B%99%E8%AA%BF%E6%9F%BB%EF%BC%88%E4%BB%96%E9%83%BD%E5%B8%82%EF%BC%89%E6%A1%88.pdf&subfolder_nav_tracking=1









 改めてどこかで論じたいと思っていますが、ざっくり申し上げて、我が国の若者政策は、戦後、青少年の「非行」「犯罪」への緊急対策として始まりました。やがて「青少年健全育成」として歩み始めたものの、実質的には「青少年問題への対策」の段階が続きます。 困難を抱え社会的排除層にある若者 、特にニート・ひきこもりの存在に対して2000年代にスポットライトが当たったことで、若者の社会的自立のための 政策形成に向けた議論がようやく始まることとなります。結果として2009年に子ども・若者育成支援推進法が成立し 、日本の若者政策の転換点として法的・政治的正当性を獲得するに至りますが、結局これも法律起案者(官僚)・国会議員・NPOなど関係者それぞれが狙ったようには機能せず、昨今の子ども・家庭庁を巡る議論でもかつて見た光景が繰り返されているところです。熱心に取り組まれた先輩方にはなはだ失礼かと恐縮しながらも、国会会議録や審議会会議録などを細かく追いかけて行って、自分なりにたどり着いたのが、上記の歴史です。





 今回、世田谷区の若者政策の見学を私が強く希望したのは、特に若者と行政のつながりを生み出す、若者が当事者として主体的になれる施策についての背景を、委員全員で共有しておきたかったためです。





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■どんなことを具体的にはやっているのか





挙げればきりがないのですが、世田谷区はとにかく子ども・若者に、真摯に向き合っていると感じます。





①ひきこもり支援





世田谷区若者総合支援センター(メルクマールせたがや、せたがや若者サポートステーション)









②児童養護施設等を巣立つ若者の支援





児童相談所を開設(2016年度)









③若者の居場所





(1)民間家屋を借り上げた小規模なもの





たからばこ(昭和女子大学と提携)・あいりす(日本大学文理学部と提携)





(2)公共施設として独立した大規模なもの





池之上青少年交流センター(いけせい)・野毛青少年交流センター(のげ青)・希望丘青少年交流センター(アップス)





④若者による情報発信 「ねつせた!」(2016年度より開始)。若者による、若者に対する、区情報の発信をSNSで実施している。若者主体に運営され、現在9期目のメンバーが取り組みを行っている。









 今回お話を伺ったのは、希望丘青少年交流センター(アップス)という施設です。「若者が気軽に立ち寄れ、思い思いに過ごすことができるフリースペース」です。若者一人ひとりの「やってみたい」、「やってみよう」をサポートする専門スタッフである「ユースワーカー」が常駐しています。





https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kusei/012/008/005/d00164904.html













■感じたこと





①「若者」をどのように捉えるか





 ご存じの通り、私はこれまで幾度となく上地市長に若者政策を求めてきたのですが、「若者」をどのように捉えるかという点で、大きな隔たりを感じています。世田谷区の取り組みは、「若者」の捉え方が包括的であり、柔軟であり、的確であると感じました。





 …とここで具体的な視察時の出来事を述べる前に、「若者」の定義について改めて確認したいと思います。





 「若者」の定義は各種法令によって異なります[1]。実は、法令上、「若者」という呼び名は無く、一般的に「若者」と言って想像ができそうな年齢の人は、「子ども」と呼んだほうが馴染む年齢までを含むことも多いです。





 例えば、少年法の「少年」、民法の「未成年者」は18歳未満、未成年者喫煙禁止法および未成年者飲酒禁止法の「未成年者」、母子及び父子並びに寡婦福祉法の「児童」は20歳未満の者であり、これらは単にそれぞれ18歳未満、20歳未満であれば、例えば、学校教育法上の「学齢児童」も、「学齢生徒」も含みます。「学齢児童」である小学生も、18歳の会社員も、各法律の下においてはそれぞれ「少年」「未成年者」「児童」です。





 しかし、「子ども」と呼ぶべき年少者までを「若者」とまとめて呼ぶのには少々違和感があります。こうした理由もあってか、2009年成立の子ども・若者育成支援推進法では、法律名に初めて「若者」という呼称が記載されたものの、「子ども・若者」という形で並列しています。





 他方、「若者」を年長者の方向に広げて考えていくと、青少年の雇用の促進等に関する法律の「青少年」が最も広く「若者」をとらえています。内閣府(2021)には、「35歳未満。ただし、個々の施策・事業の運用状況等に応じて、おおむね「45歳未満」の者についても、その対象とすることは妨げない。(法律上の規定はないが、法律に基づき定められた青少年雇用対策基本方針(平成28年1月厚生労働省)において規定。)」とあり、子ども・若者育成支援推進法の「子ども・若者」は、乳幼児から30歳代までを広く捉えたものとして、これに近いものとなっています。





 長くなりましたが、まとめると、「若者」という呼び方は、何気なく使用されるものの、その含む範囲は法令上でも曖昧さを残しています。「若者」をどのように捉えるのかは、当該自治体の若者政策に対する立ち位置を示す重要な指標ともいえます。





 こうした前提を踏まえて、世田谷区の若者政策についてみてみます。





 今回施設見学をした希望丘青少年交流センター「アップス」は、「若者」の年齢幅について、限りなく広くとらえて構えています。





・朝早い時間には不登校児童生徒やオンライン授業の大学生が利用し、





・日中には保護者同士の輪に溶け込みづらさを感じる若い親子連れが、





・放課後早い時間には小学生が、





・やがて中高生が…





といった形で、時間帯別に、様々な若者が出入りします。





 「アップス」は業務委託で運営されているのですが、下村センター長(委託先職員)が





「アップスは、ユニバーサルな部分を一手に受ける。ユースワーカーが若者と、できる限り話をして、(その若者の課題や興味関心を)個別に関係機関とつなぐためにも、アップスは、対象をわっと広げている。ユニバーサルの居場所がメインの事業であり、その中で見えてくる課題などを、個別につなぐ。その一環で、社会活動を応援するような、社会教育的なものもやっている」





とおっしゃる通り、「アップス」に常駐するユースワーカーが、若者の抱える課題や興味関心と包括的に向き合い、関係機関に的確につなぐ柔軟さを発揮していることが、世田谷区の若者政策の一面を支えていると感じました。









②若者の「無目的さ」を大切にする姿勢





 若者政策が理解を得られない原因の一つに、「なぜ何の問題もない若者を、自治体がわざわざ税を投入し支援するのか」といった反応がみられます。





 法規範的には、自治体が若者政策に取り組む責務を有するとまではいえない現状があります。先述の子ども・若者育成支援推進法は、若者政策に関する基本法的性格を有する法令ですが、そもそも基本法の抱える課題として、法規範的性格の希薄さがあります。要するに、「それを実施するための根拠としては、薄い」のです。





 基本法には「国の責務」「地方公共団体の責務」などといった、責務規定が頻繁に登場するのですが、子ども・若者育成支援推進法にもこれは当てはまります。





 こうした責務規定による関係者間の権利義務関係の強さについて塩野(2007)は、「もっとも、当該責務規定から、直ちに関係者に具体的な行動義務(受益者に具体的権利)が生ずるものではないと解されている」とし、その理由として「法律の留保にいう根拠規範であるとするには、責務要件の定めが広範に過ぎる」としています[2]





 つまり、子ども・若者育成支援推進法があるからといって、地方自治体が若者政策をやるとは必ずしも言えないわけです。こうした法規範性の希薄さが、冒頭の「なぜ何の問題もない若者を、自治体がわざわざ税を投入し支援するのか」という反応につながる側面は否めないと思いますし、ここをしっかり強化していかないと、これからも若者政策は一向に予算化されないと感じます。





 一方で、そもそも自治体若者政策は、若者の自立を進め、「大人」への移行をスムーズに行うための社会的システムを構築するものであり、若者の自己形成・経済的自立・社会的自立(社会参加)の全体に及ぶとする議論があります(松下・穂積2017)[3]





 これを考えれば、若者が自己形成し、経済的社会的自立を果たし、当該自治体の将来に希望をもたらすという過程の出発点として、税を投入することは何ら疑問の余地がないようにも思える。





 むしろ、そのような積極的若者政策をとらない自治体に、未来は無いんじゃないか?と、私は思います。





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 あえて若者政策の「アウトカム(成果)」のようなものを論ずるのであれば、先述の若者の自己形成・経済的社会的自立が当該自治体にもたらす行財政的メリットと将来への希望、ということになると思います。身もふたもない言い方ですが、「若者に支援すれば、将来老いたあなたたちを助けてくれます」ということです。





 しかし、これを目的的に作り出すことは、ほぼ不可能ですよね。





「あなたはこの青少年施設でサッカーを楽しくやり自己形成しなさい」





「あなたは6か月就労訓練をしたから明日から即自立しなさい」





といわれても、ちょっとそれは無理だろう、という話です。





 だからこそ、若者政策は、いろいろな若者が、いろいろなことをやるなかで、自分の特性を見出して、自己形成し、それが結果的に経済的・社会的自立へとつながっていく、いわば「無目的であること」を周囲がいかに担保してあげられるかが鍵といえると、私はずっと思っています。









 下村センター長の、





「基本、ここ(アップス)ではイベントをやりません。若者が自分たちでやりたいといったときに応援をしたいので、職員のマンパワー、物理的な資源を、とっておいているのです。伴走支援をするので、そういう意味では結果的に、若者自身が(アップスで)開催するイベントはあります。目的を持たないで来る子と、持っている子は、半々です。ある子は、今日は目的がある、でも明日は目的はないかもしれない。(単に場所を)開放しているのではなく、対話をものすごく丁寧にやっています」





 という言葉に、若者の「無目的さ」を大切にする姿勢が表れていました。










[1] 内閣府(2021)「子供・若者白書 令和3年度版」pp.342





[2] 塩野宏「基本法について」2007年,日本学士院紀要 第六十三巻第一号,pp.15





[3] 松下啓一・穂積亮次, 2017, 『自治体若者政策・愛知県新城市の挑戦』萌書房


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