2017年08月03日

【健康的な高齢化 Healthy Ageing】

■健康的な高齢化 Healthy Ageing

先日、「世界保健機関幹部職員との意見交換会」に参加してきました。ひとりで。

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県庁で行われたので、県議会議員のかたが前にずらっと並んでいて、県内の市町村から職員や、議員が来る、という会でした。横須賀市からの参加は私だけでした(さみしい)。

この日、お話してくださったのは、WHO(世界保健機関)のJohn Beard Ph.D ,Director, Ageing and Life Course(ジョン・ベアード博士、高齢化とライフコース 部長)です。

この機会、ちょっと珍しいのです。何が珍しいのかというと、



・国連の専門機関が、国ではなくて、先進国の県レベルと直接交流を持つこと



が珍しいのです。2016年12月から、神奈川県は→WHOに1名(角由佳 様)派遣しています。

神奈川県は超高齢化社会に備えて「ヘルスケア・ニューフロンティア」という取り組みをしていて、その中で、「健康と病気を2つの明確に分けられる概念として捉えるのではなく、心身の状態は健康と病気の間を連続的に変化するものと捉え、このすべての変化の過程を表す概念」として「未病(みびょう)」を提唱し、その改善に取り組んでいます。

そして、WHOとしても神奈川県の「未病改善」の取り組みに関心があり、このようにしてWHOと県が直接関わりを持つようになったそうです。

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以下、John博士のお話で印象に残ったことを掲載します。(かっこ内は加藤の感想)

■多様性:「典型的な高齢者」というものは存在しない。多様な高齢者に対する政策を検討しなければならない。

(みんなが同じように歳を取り、同じような健康状態であるわけじゃないですよ、ということを改めて確認しましょうね、ということです)

■不平等:高齢者の多様性はランダムではない。トップレベル(に健康)の人は、人生における様々な優位性のもとに、その健康を維持している。
→政策決定者が、この不平等性をより強化してしまうのではなく、乗り越えるための政策を考えなければならない。

(お金を持っていたり、健康に良い場所に暮らしていたり、そういう色んな「いいこと」を持っている人とそうでない人の差を乗り越えられるようにしましょう)

■1950年代であれば、20代半ばまで学び、その後働き、70代半ばで亡くなるのが一般的だった。
しかしながら以後、寿命は延びた。出産後のキャリア復帰など、柔軟な働き方を支援しなければならない。
健康は重要。健康でなければ、人生において残されたオプション(選択肢)が限りなく少なくなってしまう。
「今の70歳は、昔の60歳だ」、と言い切れるほど健康状態が改善したとはいいがたい。
だからこそ、高齢者の健康を維持する政策が重要である。

■そもそも、健康な高齢化(Healthy Ageing)、とは何か
Healthy Ageingの定義:高齢であっても満足できる生活を可能にするための機能的能力(functional ability)を発達および維持する過程

■「機能的能力(functional ability)」の分野
高齢者のかたが、やりたい、または、在りたい状態 を実現するための能力。
→何歳であっても常に成長できる、などの5項目

■身体的な能力に制約があると、公共機関にアクセスできない。つまり、機能的能力とは、個人の能力だけではなく、一面では、その人が住んでいるまちであり、環境に左右される

実現するには、様々なセクターの横断的な取り組みが必要となる。それは。市町村レベルだからこそ実現可能であるものもある。
■例えば、「mobility」(移動可能かどうか)とは:
とある、買い物に行きたい男性がいたとする。
そもそも、住んでいる家は安全か?家の中での移動に困ってはいないか?車いすでも家にあがれるランプがついているか?緊急時のアラームも必要かもしれない。
医療面でのサポートも必要である。それはテクノロジーが解決できるものかもしれない。
街灯はついているか?安全か?などの環境も重要である。歩道も、穴が開いているような荒れた歩道では移動できない。多くの高齢者には休憩するベンチも必要である。トイレも必要である。
そして、お店にようやく到達したとして、そのお店にfriendlyな店員がいる必要もある。
様々なビジネス界の皆様に一堂に会していただいて、どのようにすれば高齢者に優しい店にできるかということも話しあった。大きなお金が必要なものばかりではなく、気づきで変えられるものがある。

■健康な高齢化のための公衆衛生の枠組みと機会
個人の持つ内在的能力は(加齢等で)低下する。しかし、環境が、それをサポートしてくれる。


  • グループ1)高く安定した機能(を持つ個人)

  • グループ2)機能低下(した個人)

  • グループ3)顕著な機能喪失(をした個人)


の3グループに分かれていく。3つのグループそれぞれをサポートすることは可能である。そのような政策を実現するのは議員であり、この部屋の一人ひとりである。

■グループ1には禁煙、疾病の早期発見と治療などの介入。
→グループ1への介入の重要な側面は、バリアを壊すこと。例えば、高齢者を継続して雇用したくない雇用主の考え方だったり、定年退職で働き続けたい人を退職に追い込む制度だったりが、バリアである。

■グループ2には、疾病予防ではなく、疾病によるさらなる機能低下を防ぐ必要があるので、グループ1とは異なるアプローチが必要。
→そのためにはHealth systemを大幅にデザインしなおさねばならない。
特定の症状をもつ個人に対応するものである。症状を個別に治療するというのが現在の医療システム。しかし、持続的に効果的なのは、integrated(統合された)ケアである。その個人の中での優先順位をつけながら、統合的に対応していく。

■グループ3には、環境面において、その失われた能力の補完が必要である。
一般市民の高齢者に対する態度の変容を促すことも必要である。テクノロジーも一つの解である。
長期的な介護が重要な役割を果たす。日本は世界でも最も先進的な介護制度を備えており、我々(WHO)も多くを学んできた。いかに高齢者が顕著に身体機能を喪失していたとしても、尊厳のある有意義な生活ができるようにすることが大切である。黒岩知事の掲げる「未病」にとても近い。

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